東京都植物誌について
「植物誌」はある地域の植物を網羅的に記録したものであり、地域の自然環境を把握するための最も重要な情報源として、国内の多くの道府県や市町村で編纂されてきました。しかし東京都の生物多様性に関する情報は不十分な上に散逸しており、「東京都植物誌」も未だに編纂されていません。東京都は平野部に広がる大都市や、郊外の丘陵地、奥多摩の広大な山地、約40の島々からなる伊豆・小笠原諸島など、非常に多様な自然環境を有しています。しかも都内には秩父多摩甲斐国立公園(奥多摩)・富士箱根伊豆国立公園(伊豆諸島)・小笠原国立公園(小笠原諸島)の3つの国立公園が含まれており、小笠原諸島は世界自然遺産にも登録されています。これらの貴重な自然環境の現状を把握して後世に伝えるためにも、東京都植物誌の編纂は急務です。
植物誌の編纂についての考え方
植物誌をつくるには、証拠となる植物標本の収集が重要です。生物の名称は現在と過去では異なることがしばしばあり、同定間違いが無いとも限りません。実物である標本が残されていれば、同定記録に疑問が生じた場合、いつでも確認することができます。ただし標本を作製するには多くの手間がかかります。また、植物を採集するために土地の所有者に承諾を得たり、自然公園など保護区の場合は採集許可を申請するのも容易ではありません。そこで、標本に準ずる証拠資料として、生態写真も活用することにしました。証拠資料としての生態写真の価値は実物である標本には及びませんが、少なくとも「いつ、どこで、誰が撮影したか」が正確に記録された写真は、生物多様性の重要な情報源になることが期待されます。標本の収集は今後も最重要課題ですが、生態写真を加えることで、より多くの方々に東京都植物誌の編纂に関わって頂きたいと考えています。
東京都植物研究会について
本会は、「東京都植物誌」の出版・改訂および東京都に生育する植物に関する研究および知識の普及とこれに関する情報交換をはかることを目的として、2011年に発足しました。事務局は東京都立大学・牧野標本館に置き、以下のような活動を行っています。
- 都内各地における現地調査や標本採集会
- 植物に関する勉強会や技術講習会の開催
- 本データベースサイトの構築・管理